「奈良県(宇陀土木事務所)発注の測量業務をめぐる談合:住民監査請求書」
住民監査請求書
平成20年8月29日
奈良県監査委員 殿
請求人
住所 奈良県生駒市
氏名 阪口 保
職業
外29名
下記のとおり、地方自治法第242条第1項の規定により、
別紙事実証明書を添付し、奈良県監査委員に対し、
必要な措置を請求する。
請 求 の 要 旨
1 奈良県知事は、奈良県宇陀土木事務所で平成19年5月30日から平成20年1月22日までの間において実施された測量・調査等請負の各入札(25件中、平成19年11月14日実施分を除く24件)において、萩原測量事務所、白鳥測量設計社、伯鳳技研、井上測量設計事務所、第一測量設計所、古川測量、大門測量設計事務所、室生技術コンサルタント、植田測量設計事務所、測量設計スギモト、栄進らが、談合したことによって奈良県が被った各損害(損害金額合計888万7200円)について、上記各落札者及び上記各入札において予定価格を漏洩した同土木事務所職員らに対し、共同不法行為に基づく損害賠償請求権を行使すること。
請 求 の 理 由
1 入札の実施
(1)平成19年5月30日、奈良県(宇陀土木事務所)は、一般国道368号地域連携推進事業測量委託を実施した。室生技術コンサルタント有限会社をはじめとする12社が入札に参加した。
萩原測量事務所3,370,000円、白鳥測量設計社3,400,000円、伯鳳技研3,300,000円、井上測量設計事務所3,350,000円、第一測量設計所3,320,000円、古川測量3,400,000円、大門測量設計事務所3,330,000円、室生技術コンサルタント3,250,000円、植田測量設計事務所3,700,000円、阿騎野技術コンサルタント3,350,000円、測量設計スギモト3,400,000円、栄進3,350,000円が応札し、室生技術コンサルタント3,250,000円(消費税込み3,412,500円)で落札した。
事実証明書1
(2)平成19年5月31日、奈良県(宇陀土木事務所)は、一般国道368号地域連携推進事業測量委託において、室生技術コンサルタント有限会社との間で、請負代金3,412,500円で測量・調査請負契約を締結した。
測量・調査等請負契約書に、総則・業務行程表等の提出・契約の保証・報告の義務・下請負の禁止等が記載されている。
・・・・・事実証明書2
(3)室生技術コンサルタント有限会社への測量委託料の支出は、平成19年6月7日1,000,000円(前払)、平成19年12月7日2,412,500円、合計3,412,500円である。
・・・・・事実証明書3
(4)成19年5月30日~平成20年1月22日迄の入札結果(指名競争入札)
入札結果及び契約内容から、(1)と類似した内容がある。工事により入札者が異なる。しかし、どの入札も落札率が高く談合の疑いが濃い。
どの事業にも測量・調査等請負契約書に、総則・業務行程表等の提出・契約の保証・報告の義務・下請負の禁止等が記載されており、室生技術コンサルタント有限会社と測量・調査請負契約を締結した時と同じである。
25件中 落札率99%が10件
98%が 3件
97%が 6件
過半数が97%以上である。また、本件は、業者間の談合だけでなく、県職員が予定価格を業者に漏らすと言う行為もあり官製談合である。
(平成19年5月30日~平成20年1月22日迄の入札結果)
開札の日時
予定価格(円)
落札の金額(円)
落 札 者
落札率
19年5月30日
3,444,000
3,412,500
室生技術コンサルタント
99
19年6月21日
3,118,500
2,992,500
井上測量設計事務所
96
19年6月28日
1,239,000
1,155,000
伯鳳技研
93
19年6月28日
714,000
682,500
白鳥測量設計社
96
19年7月17日
1,029,000
997,500
萩原測量事務所
97
19年7月30日
1,197,000
1,155,000
植田測量設計事務所
96
19年8月21日
2,278,500
2,205,000
伯鳳技研
97
19年8月21日
1,858,500
1,837,500
栄 進
99
19年9月18日
798,000
777,000
室生技術コンサルタント
97
19年9月18日
1,585,500
1,575,000
栄 進
99
19年9月18日
1,564,500
1,554,000
大門測量設計事務所
99
19年9月18日
703,500
693,000
大門測量設計事務所
99
19年9月18日
934,500
924,000
測量設計スギモト
99
19年9月26日
1,302,000
1,260,000
井上測量設計事務所
97
19年10月11日
2,541,000
2,467,500
白鳥測量設計社
97
19年10月11日
1,081,500
1,029,000
測量設計スギモト
95
19年10月25日
3,507,000
3,465,000
古川測量
99
19年11月14日
1,239,000
1,039,500
井上測量設計事務所
84
19年12月12日
1,312,500
1,291,500
第一測量設計所
98
19年12月12日
1,921,500
1,890,000
測量設計スギモト
98
19年12月12日
3,832,500
3,822,000
室生技術コンサルタント
99.7
19年12月20日
3,150,000
3,129,000
大門測量設計事務所
99
20年1月15日
735,000
714,000
室生技術コンサルタント
97
20年1月15日
3,213,000
3,150,000
古川測量
98
20年1月22日
2,289,000
2,257,500
井上測量設計事務所
99
事実証明書4
2 談合の存在
奈良地検は、県発注の測量と用地測量調査の二つの指名競争入札で談合したとして、「栄進」社長荒井容疑者と「伯鳳技研」営業統括者の奥村容疑者を競売入札妨害(談合)
の罪で奈良地裁に起訴した。昨年9月18日執行の入札が、起訴事実の一つといわれており、この時の落札率は99%である。又、他の入札についても同一の指名競争入札であるところから、入札業者が同じケースが多く談合が容易に可能である。落札を許す予定価格に極めて近い価格で落札されている以上、(4)の上記の落札率の表から全ての入札について談合を指摘できる。
事実証明書5
3 奈良県の損害
(1)入札業者間による談合という不正行為により落札額が形成されたものであり、公正な競争入札がおこなわれていれば落札率は低下したはずである。
もって予定価格に近接する高額な落札はありえず奈良県はもっと安価な代金で本件各業務の発注ができた。
各業者は請負契約額(委託金額)から公正に競争入札が行われていれば形成されるであろう請負金額を差し引いて残る部分相当の金員の利益を不当に得た。そのことにより、奈良県は同等の損害を受けた。
談合損害額の推定にあたり、正確な請負金額は存在しないが、談合の損害賠償を求める同種の裁判では、談合損害金を落札金額の20%としている。本件においても、20%とみなすことが妥当であり、奈良県の談合損害額金は、最終請負金額の20%相当金となる。
(2)談合損害金
開札の日時
損害金20%
落札の金額(円)
落 札 者
落札率
19年5月30日
682,500
3,412,500
室生技術コンサルタント
99
19年6月21日
598,500
2,992,500
井上測量設計事務所
96
19年6月28日
231,000
1,155,000
伯鳳技研
93
19年6月28日
136,500
682,500
白鳥測量設計社
96
19年7月17日
199,500
997,500
萩原測量事務所
97
19年7月30日
231,000
1,155,000
植田測量設計事務所
96
19年8月21日
441,000
2,205,000
伯鳳技研
97
19年8月21日
367,500
1,837,500
栄 進
99
19年9月18日
155,400
777,000
室生技術コンサルタント
97
19年9月18日
315,000
1,575,000
栄 進
99
19年9月18日
310,800
1,554,000
大門測量設計事務所
99
19年9月18日
138,600
693,000
大門測量設計事務所
99
19年9月18日
184,800
924,000
測量設計スギモト
99
19年9月26日
252,000
1,260,000
井上測量設計事務所
97
19年10月11日
493,500
2,467,500
白鳥測量設計社
97
19年10月11日
205,800
1,029,000
測量設計スギモト
95
19年10月25日
693,000
3,465,000
古川測量
99
19年11月14日
請求から除外
1,039,500
井上測量設計事務所
84
19年12月12日
258,300
1,291,500
第一測量設計所
98
19年12月12日
378,000
1,890,000
測量設計スギモト
98
19年12月12日
764,400
3,822,000
室生技術コンサルタント
99.7
19年12月20日
625,800
3,129,000
大門測量設計事務所
99
20年1月15日
142,800
714,000
室生技術コンサルタント
97
20年1月15日
630,000
3,150,000
古川測量
98
20年1月22日
451,500
2,257,500
井上測量設計事務所
99
計8,887200
24件(1件は請求から除外) 損害金20%として計算すると、談合損害額金888万7200円となる。 よって奈良県の損害額は888万7200円となり、上記一覧表に基づき、損害賠償を求めるべきである。
4 監査委員に求める措置
奈良県は、違法な上記24件(平成19年5月30日~平成20年1月22日に奈良県宇陀土木事務所で実施された測量・調査等請負の入札25件中、平成19年11月14日実施分を除く24件。)の各談合入札により、上記3(2)の一覧表に記載した各損害を被っており、奈良県は、上記3(2)の一覧表に記載した各落札者及び予定価格を漏洩した宇陀土木事務所の担当職員に対して上記各損害の賠償を請求する権利を有しているのに、奈良県知事はこれを怠っている。
したがって、本件監査請求人らは、監査委員が、奈良県知事に対して、各落札者及び予定価格を漏洩した宇陀土木事務所の担当職員に対して、上記各損害の賠償を請求するよう勧告することを求める。
以上
添 付 資 料
事実証明書1
平成19年入札結果及び契約内容(室生技術コンサルタント)
事実証明書2
測量・調査等請負契約書 (室生技術コンサルタント)
事実証明書3
支出命令書 (室生技術コンサルタント)
事実証明書4
1(4)の一覧表にある入札結果及び契約内容
事実証明書5
2008年2月21日付朝日新聞記事