「当Webサイトについて」

※当Webサイトは、現在、1奈良県民である個人のボランティアとして継続表示しております。当Webサイト内容についてのクレームや削除要請については、5W1Hで具体的な部分の指摘による明確な内容と趣旨を法的根拠にもとづいて記録証拠が残る媒体で明示していただけますようお願いいたします。
 

2008年10月28日火曜日

「王寺町市民オンブズマンによる住民訴訟 片岡神社旧参道土地購入は違法」

「王寺町市民オンブズマンによる住民訴訟 
片岡神社旧参道土地購入は違法」

詳しくは、
王寺町市民オンブズマン 
Webサイト でご覧いただけます。
http://blog.goo.ne.jp/tetsuji_2006

「奈良県市民オンブズマン11月15日(土)の例会のお知らせです。」

「奈良県市民オンブズマン
11月15日(土)の例会のお知らせです。」

2008年11月15日(土)午後1時~4時


 奈良県橿原文化会館 3階 第2会議室
 橿原市北八木町3丁目65ー5 にて行います。
 最寄り駅は近鉄 大和八木駅で、
 駅から徒歩1分です。


「初めて参加される方は、
奈良県橿原文化会館 の
入り口を入って左奥にある受付兼管理事務所で
3F 第2会議室の場所をお尋ねください。」

2008年10月17日金曜日

「平成20年(2008年)10月16日(木)奈良・朝日新聞など各紙に県オンブズ勝訴記事」

「平成20年(2008年)10月16日(木)
奈良・朝日新聞など各紙に県オンブズ勝訴記事」


http://ombudsmannara.main.jp/20081016sinbun.htm



産経・関西 2008年10月16日

http://www.sankei-kansai.com/2008/10/16/20081016-003042.html

朝日・関西

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200810150095.html

奈良市の談合の損害「6300万円請求を」 市に命令(1/2ページ)

2008年10月15日

2008年10月8日水曜日

「奈良県(宇陀土木事務所)発注の測量業務をめぐる談合:住民監査請求書」

「奈良県(宇陀土木事務所)発注の測量業務をめぐる談合:住民監査請求書」

         住民監査請求書
平成20年8月29日
奈良県監査委員 殿

請求人
住所 奈良県生駒市
氏名 阪口  保
職業

外29名

 下記のとおり、地方自治法第242条第1項の規定により、
別紙事実証明書を添付し、奈良県監査委員に対し、
必要な措置を請求する。

          請 求 の 要 旨

1 奈良県知事は、奈良県宇陀土木事務所で平成19年5月30日から平成20年1月22日までの間において実施された測量・調査等請負の各入札(25件中、平成19年11月14日実施分を除く24件)において、萩原測量事務所、白鳥測量設計社、伯鳳技研、井上測量設計事務所、第一測量設計所、古川測量、大門測量設計事務所、室生技術コンサルタント、植田測量設計事務所、測量設計スギモト、栄進らが、談合したことによって奈良県が被った各損害(損害金額合計888万7200円)について、上記各落札者及び上記各入札において予定価格を漏洩した同土木事務所職員らに対し、共同不法行為に基づく損害賠償請求権を行使すること。

          請 求 の 理 由
1 入札の実施
(1)平成19年5月30日、奈良県(宇陀土木事務所)は、一般国道368号地域連携推進事業測量委託を実施した。室生技術コンサルタント有限会社をはじめとする12社が入札に参加した。
萩原測量事務所3,370,000円、白鳥測量設計社3,400,000円、伯鳳技研3,300,000円、井上測量設計事務所3,350,000円、第一測量設計所3,320,000円、古川測量3,400,000円、大門測量設計事務所3,330,000円、室生技術コンサルタント3,250,000円、植田測量設計事務所3,700,000円、阿騎野技術コンサルタント3,350,000円、測量設計スギモト3,400,000円、栄進3,350,000円が応札し、室生技術コンサルタント3,250,000円(消費税込み3,412,500円)で落札した。
事実証明書1

(2)平成19年5月31日、奈良県(宇陀土木事務所)は、一般国道368号地域連携推進事業測量委託において、室生技術コンサルタント有限会社との間で、請負代金3,412,500円で測量・調査請負契約を締結した。
測量・調査等請負契約書に、総則・業務行程表等の提出・契約の保証・報告の義務・下請負の禁止等が記載されている。    
・・・・・事実証明書2

(3)室生技術コンサルタント有限会社への測量委託料の支出は、平成19年6月7日1,000,000円(前払)、平成19年12月7日2,412,500円、合計3,412,500円である。            
・・・・・事実証明書3

(4)成19年5月30日~平成20年1月22日迄の入札結果(指名競争入札)
入札結果及び契約内容から、(1)と類似した内容がある。工事により入札者が異なる。しかし、どの入札も落札率が高く談合の疑いが濃い。
どの事業にも測量・調査等請負契約書に、総則・業務行程表等の提出・契約の保証・報告の義務・下請負の禁止等が記載されており、室生技術コンサルタント有限会社と測量・調査請負契約を締結した時と同じである。
25件中  落札率99%が10件
98%が 3件
97%が 6件
過半数が97%以上である。また、本件は、業者間の談合だけでなく、県職員が予定価格を業者に漏らすと言う行為もあり官製談合である。
 (平成19年5月30日~平成20年1月22日迄の入札結果)
開札の日時
予定価格(円)
落札の金額(円)
落 札 者
落札率


19年5月30日
3,444,000
3,412,500
室生技術コンサルタント
99
19年6月21日
3,118,500
2,992,500
井上測量設計事務所
96
19年6月28日
1,239,000
1,155,000
伯鳳技研
93
19年6月28日
 714,000
 682,500
白鳥測量設計社
96
19年7月17日
1,029,000
  997,500
萩原測量事務所
97
19年7月30日
1,197,000
1,155,000
植田測量設計事務所
96
19年8月21日
2,278,500
2,205,000
伯鳳技研
97
19年8月21日
1,858,500
1,837,500
栄 進
99
19年9月18日
 798,000
 777,000
室生技術コンサルタント
97
19年9月18日
1,585,500
1,575,000
栄 進
99
19年9月18日
1,564,500
1,554,000
大門測量設計事務所
99
19年9月18日
703,500
693,000
大門測量設計事務所
99
19年9月18日
 934,500
 924,000
測量設計スギモト
99
19年9月26日
1,302,000
1,260,000
井上測量設計事務所
97
19年10月11日
2,541,000
2,467,500
白鳥測量設計社
97
19年10月11日
1,081,500
1,029,000
測量設計スギモト
95
19年10月25日
3,507,000
3,465,000
古川測量
99
19年11月14日
1,239,000
1,039,500
井上測量設計事務所
84
19年12月12日
1,312,500
1,291,500
第一測量設計所
98
19年12月12日
1,921,500
1,890,000
測量設計スギモト
98
19年12月12日
3,832,500
3,822,000
室生技術コンサルタント
99.7
19年12月20日
3,150,000
3,129,000
大門測量設計事務所
99
20年1月15日
 735,000
 714,000
室生技術コンサルタント
97
20年1月15日
3,213,000
3,150,000
古川測量
98
20年1月22日
2,289,000
2,257,500
井上測量設計事務所
99
事実証明書4

2 談合の存在
  奈良地検は、県発注の測量と用地測量調査の二つの指名競争入札で談合したとして、「栄進」社長荒井容疑者と「伯鳳技研」営業統括者の奥村容疑者を競売入札妨害(談合)
 の罪で奈良地裁に起訴した。昨年9月18日執行の入札が、起訴事実の一つといわれており、この時の落札率は99%である。又、他の入札についても同一の指名競争入札であるところから、入札業者が同じケースが多く談合が容易に可能である。落札を許す予定価格に極めて近い価格で落札されている以上、(4)の上記の落札率の表から全ての入札について談合を指摘できる。
事実証明書5

3 奈良県の損害
(1)入札業者間による談合という不正行為により落札額が形成されたものであり、公正な競争入札がおこなわれていれば落札率は低下したはずである。
もって予定価格に近接する高額な落札はありえず奈良県はもっと安価な代金で本件各業務の発注ができた。
   各業者は請負契約額(委託金額)から公正に競争入札が行われていれば形成されるであろう請負金額を差し引いて残る部分相当の金員の利益を不当に得た。そのことにより、奈良県は同等の損害を受けた。
   談合損害額の推定にあたり、正確な請負金額は存在しないが、談合の損害賠償を求める同種の裁判では、談合損害金を落札金額の20%としている。本件においても、20%とみなすことが妥当であり、奈良県の談合損害額金は、最終請負金額の20%相当金となる。

 (2)談合損害金
開札の日時
損害金20%
落札の金額(円)
落 札 者
落札率


19年5月30日
682,500
3,412,500
室生技術コンサルタント
99
19年6月21日
598,500
2,992,500
井上測量設計事務所
96
19年6月28日
231,000
1,155,000
伯鳳技研
93
19年6月28日
136,500
 682,500
白鳥測量設計社
96
19年7月17日
199,500
 997,500
萩原測量事務所
97
19年7月30日
231,000
1,155,000
植田測量設計事務所
96
19年8月21日
441,000
2,205,000
伯鳳技研
97
19年8月21日
367,500
1,837,500
栄 進
99
19年9月18日
155,400
 777,000
室生技術コンサルタント
97
19年9月18日
315,000
1,575,000
栄 進
99
19年9月18日
310,800
1,554,000
大門測量設計事務所
99
19年9月18日
138,600
693,000
大門測量設計事務所
99
19年9月18日
184,800
 924,000
測量設計スギモト
99
19年9月26日
252,000
1,260,000
井上測量設計事務所
97
19年10月11日
493,500
2,467,500
白鳥測量設計社
97
19年10月11日
205,800
1,029,000
測量設計スギモト
95
19年10月25日
693,000
3,465,000
古川測量
99
19年11月14日
請求から除外
1,039,500
井上測量設計事務所
84
19年12月12日
258,300
1,291,500
第一測量設計所
98
19年12月12日
378,000
1,890,000
測量設計スギモト
98
19年12月12日
764,400
3,822,000
室生技術コンサルタント
99.7
19年12月20日
625,800
3,129,000
大門測量設計事務所
99
20年1月15日
 142,800
 714,000
室生技術コンサルタント
97
20年1月15日
  630,000
3,150,000
古川測量
98
20年1月22日
451,500
2,257,500
井上測量設計事務所
99
         計8,887200
24件(1件は請求から除外) 損害金20%として計算すると、談合損害額金888万7200円となる。 よって奈良県の損害額は888万7200円となり、上記一覧表に基づき、損害賠償を求めるべきである。


4 監査委員に求める措置
  奈良県は、違法な上記24件(平成19年5月30日~平成20年1月22日に奈良県宇陀土木事務所で実施された測量・調査等請負の入札25件中、平成19年11月14日実施分を除く24件。)の各談合入札により、上記3(2)の一覧表に記載した各損害を被っており、奈良県は、上記3(2)の一覧表に記載した各落札者及び予定価格を漏洩した宇陀土木事務所の担当職員に対して上記各損害の賠償を請求する権利を有しているのに、奈良県知事はこれを怠っている。
 したがって、本件監査請求人らは、監査委員が、奈良県知事に対して、各落札者及び予定価格を漏洩した宇陀土木事務所の担当職員に対して、上記各損害の賠償を請求するよう勧告することを求める。

                                      以上

           添 付 資 料
事実証明書1
平成19年入札結果及び契約内容(室生技術コンサルタント)
事実証明書2
測量・調査等請負契約書    (室生技術コンサルタント)
事実証明書3
支出命令書          (室生技術コンサルタント)
事実証明書4
1(4)の一覧表にある入札結果及び契約内容
事実証明書5
2008年2月21日付朝日新聞記事

「準備書面(本案前の答弁に対する反論):政務調査費違法支出損害賠償命令請求」

「準備書面(本案前の答弁に対する反論):政務調査費違法支出損害賠償命令請求事件」

平成19年(行ウ)第20号 政務調査費違法支出損害賠償請求命令請求事件
原   告   阪   口      保   外54名
被   告    奈良県知事  荒   井   正   吾

準備書面

被告らの本案前の答弁に対し、次のとおり反論する。
1 被告の主張
被告は,最高裁平成2年6月5日第三小法廷判決・民集44巻4号719頁を引用した上で,本件監査請求は請求対象の特定を欠く不適法なものであり,したがって,「本件訴えは適法な住民監査請求を経ていない不適法なものであるから,直ちに却下すべきである。」と主張する(被告の平成20年1月23日付答弁書4頁)。
上記最高裁判決以後,下級審裁判所や地方公共団体の監査実務において,上記最高裁判決の判旨を杓子定規に解釈し,監査請求の対象につき必要以上に厳格な特定を求める悪しき傾向が見られた。
そのような中,平成16年に監査請求対象の特定についての最高裁判決が2つ下され,この問題に対する最高裁判所の考えが明らかとなった。

2 平成16年の2件の最高裁判決
 (1) 平成16年11月25日第一小法廷判決(民集58巻8号2297頁)
これは,第一審(佐賀地裁)及び原審(福岡高裁)が監査対象の特定を欠くとして,訴えを却下すべきものとしていたところ,原審(福岡高裁)判決を破棄し,原審へ差し戻したものである。
同判決は、監査請求対象の特定の有無の基準について,以下のように判示している。
「住民監査においては,対象とする財務会計上の行為又は怠る事実(以下,「当該行為等」という。)を,他の事項から区別し特定して認識することができるように,個別的,具体的に摘示することを要するが,監査請求書及びこれに添付された事実を証する書面の各記載,監査請求人が提出したその他の資料等を総合して,住民監査請求の対象が特定の当該行為等であることを監査委員が認識することができる程度に摘示されているのであれば,これをもって足りるのであり,上記の程度を越えてまで当該行為等を個別的,具体的に摘示することを要するものではないというべきである。そして,この理は,当該行為等が複数である場合であっても異なるものではない。最高裁平成元年(行ツ)第68号同平成2年6月5日第三小法廷判決・民集44巻4号719頁は,以上と異なる趣旨をいうものではない。」
そして,具体的事実への当てはめについて,以下のように判示する。
「前記事実関係等によれば,本件監査請求は,平成5年度,同6年度,同8年度及び同9年度の県庁全体の複写機使用料にかかる支出のうち,県の調査の結果不適切とされたものの合計額4億2021万2000円が違法な公金支出であるとして,これによる県の損害を補てんするために必要な措置を講ずることを求めるものであり,県の上記調査においては,対象期間中の複写機使用料に係る個々の支出ごとに不適切な支出であるかどうか検討されたというのであるから,本件監査請求において,対象とする各支出について,支出した部課,支出した年月日,金額,支出先等の詳細が個別的,具体的に摘示されていなくとも,県監査委員において,本件監査請求の対象を特定して認識することができる程度に摘示されていたものということができる。
そうすると,本件監査請求は,請求の対象の特定に欠けるところはないというべきである。」
 (2) 平成16年12月7日第三小法廷判決(集民215号871頁)
これは,第一審(福井地裁)及び原審(名古屋高裁金沢支部)が監査対象の特定を欠くとして,訴えを却下すべきものとしていたところ,原審判決を一部破棄自判し,破棄部分を第一審(福井地裁)へ差し戻したものである。
同判決は、監査請求対象の特定の有無の基準について,前掲最高裁判決と同様に判示した後、具体的当てはめについて、次のとおり判示している。
「前記事実関係等によれば,本件監査請求は,旅費調査委員会等の各調査においてそれぞれ事務処理上不適切な支出とされたものである本件各旅費の支出が違法な公金の支出であるとして,これによる県の損害を補てんするために必要な措置を講ずることを求めるものであり,旅費等調査委員会等の各調査においては,それぞれ対象とする旅費の支出について1件ごとに不適切なものであるかどうかを調査したというものであるから,本件監査請求において,対象とする各支出,すなわち,支出負担行為,支出命令及び法232条の4第1項にいう協議の支出について,支出に係る部課,支出年月日,支出金額等の詳細が個別的,具体的に摘示されていなくとも,県監査委員において,本件監査請求の対象を特定して認識することができる程度に摘示されていたものということができる。
そうすると,本件監査請求は,請求の対象の特定に欠けるところはないというべきである。」

3 その後の下級審判決-仙台地裁平成19年11月13日判決(裁判所HPに掲載)
 (1) 同判決は,被告宮城県知事に対し,政務調査費の返還請求をするよう求め求めた住民代位請求訴訟の判決であり,本件訴訟と基本的に同一の事案である。
同事案では、監査請求対象の特定の有無が争点となったが、この点についての被告らの主張と原告らの反論は概要次のとおりである。
被告や補助参加人(同訴訟の相手方)らの主張は次のとおりである。
「本件は住民訴訟であるから事前に適法な監査請求を経ていなければならないところ、本件監査請求は、本件政務調査費の支出のうち本件調査研究費等の支出費目の支出が平成14年度分の4.2パーセント程度であるべきだとして、費目ごとに『4.2パーセントを超えているので支出の中に違法・不当な支出が含まれている』又は『4.2パーセントを超える部分は違法・不当な支出である』等として各補助参加人の本件政務調査費のうち本件調査費等の支出費目の支出全部の監査を求めるというもので、違法又は不当と主張する財務会計上の行為を他の事項から区別して特定認識できるように個別的・具体的に摘示されておらず、その抽象的、包括的又は網羅的であり、監査請求の対象の特定を欠き不適法である。」
これに対し原告らは次のとおり反論した。
「ア 地方公共団体の情報は十分に公開されていないため、住民にとって地方公共団体の活動、政策の詳細を知ることが非常に困難な状況にあり、このような状況の下で、個々の財務会計上の行為の特定を求めることは、住民に監査請求を断念させることになる。他方、監査委員は監査の過程において、与えられた権限を行使して資料の提出を受けることにより、監査の対象を容易に特定しうるのであるから、住民監査請求制度の機能を実効性のあるものとするためには、行為の時期、内容、態様、目的、金額、行為者らの事実のうちいくつかによって対象事項が他の事項から区別して特定認識しうる程度に摘示されていれば足り、必ずしも当該行為の一つ一つについて全てが摘示されなくてとも、監査請求の対象事項の特定としては十分である。
イ 本件監査請求は、被告が各補助参加人に対し、本件監査請求費から必要経費として支出した額を控除した残額の返還を求めないという不作為を違法として、被告に対し、各補助参加人に対する不当利得返還請求をすることをもとめるものであるから、本件監査請求の対象は、法242条1項所定の事項のうち「違法若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実」である。そうだとすると、監査対象の特定としては、当該怠る事実が他の事実と区別して特定認識できれば足りる。
これを本件に照らしてみれば、まず、県における政務調査費は、その細目的な使途ごとに交付額を定めるようなことはせず、各会派に対し、不可分一体のものとして、原告が本件監査請求で特定した、各補助参加人の平成15年4月分の政務調査費(本件政務調査費)の支出のうち、調査研究費等の支出費目全部という程度のもので必要かつ十分であり、これ以上の特定は論理的に不可能である。
しかも、原告は、本件監査請求の時点において、上記怠る事実に係る違法自由を他の違法事由から区別して特定すべく、具体的に、平成15年4月は統一選挙が実施された月であり、現職で立候補した議員は少なくとも月の半分は選挙活動に専念していたはずで、調査・研究は選挙のなかったと子の24分の1であって然るべきであると述べた上で、選挙のなかった平成14年の支出状況と比較検討した資料を提出している。
ウ よって、原告が行った本件監査請求の対象の特定がかけるところはない。」
 (2) 判決内容
こうした双方の主張を受け、同判決は以下のように判示した。
「法242条1項は,普通地方公共団体の住民は,当該普通地方公共団体の執行機関又は職員について,財務会計上の違法若しくは不当な行為又は怠る事実があると認めるときは,これらを証する書面を添え,監査委員に対し,監査を求め,必要な措置を講ずべきことを請求することができる旨規定しているところ,上記規定は,住民に対し,当該地方公共団体の執行機関又は職員による一定の具体的な財務会計上の行為又は怠る事実(以下,財務会計上の行為又は怠る事実を「当該行為等」という。)に限って,その監査と非違の防止,是正の措置とを監査委員に請求する権能を認めたものであって,それ以上に,一定の期間にわたる当該行為等を包括して,これを具体的に特定することなく,監査委員に監査を求めるなどの権能を認めたものではないと解するのが相当である。
したがって,住民監査においては,対象とする当該行為を監査委員が行うべき監査の端緒を与える程度に特定すれば足りるというものではなく,当該行為等を他の事項から区別して特定認識できる程度に個別的,具体的に摘示することを要し,また,当該行為等が複数である場合には,当該行為等の性質,目的等に照らし,これらを一体とみてその違法又は不当性を判断するのを相当とする場合を除き,各行為等を他の行為等と区別して特定認識できるように個別的,具体的に摘示することを要するが,上記摘示の特定性については監査請求書及びこれに添付された事実を証する書面の各記載,監査請求人が提出したその他の資料等を総合して,住民監査の対象が特定の当該行為であることを監査委員が認識することができる程度に摘示されているのであれば,これをもって足り,上記の程度を超えてまで当該行為等を個別的,具体的に摘示することを要するものではないというべきである。(最高裁平成2年6月5日第三小法廷判決・民集44巻4号719頁,同平成16年11月25日第一小法廷判決・民集58巻8号2297頁,同平成16年12月7日第三小法廷判決・集民215号871頁参照)」
このように述べた後,具体的事実への当てはめについて以下のように判示している。
「そして,宮城県における政務調査費は,毎年上半期,下半期ごと(上半期分については4月20日,下半期分については10月5日までに)に一括して交付されることとされており,本件政務調査費については平成15年4月の1か月分が一括して支給されたことが認められるところ,このように不可分一体のものとして支給された政務調査費のうち被告が返還請求を怠っている部分をさらに細分化して特定すべき指標は存在しないというべきである。
もっとも,前記法の趣旨に照らせば,違法事由の特定を全くなさずになされる探索的な住民監査を行うことは許されないと解すべきであるから,怠る事実の違法を主張する場合には,監査委員が当該怠る事実に係る違法事由をを他の違法事由から特定認識できる程度に個別的,具体的に主張し,これを証する書面添えて監査請求を行うことを要するものと解すべきであるが,本件監査請求において,原告は,選挙がなかった平成14年度における支出額と本件選挙があった平成15年4月における支出額を比較した上で,平成14年度の支出額の4.2パーセントを超えた部分に違法,不当な支出額が含まれていると主張して,当該怠る事実に係る違法事由を他の違法事由から区別して特定認識できるように個別的,具体的に主張し,これを証する書面を添えて本件監査請求を行っていることが認められる。
以上によれば,原告が行った本件監査請求は,対象の特定に欠けるところはないというべきである。」

3 本件監査請求では、対象の特定にかけるところはない
本件監査請求書(甲1)自体には,各会派や各議員の政務調査費について支出項目及び支出金額は記載されていない。しかし,監査請求書には各会派や各議員の収支報告書が添付されている。したがって,本件監査請求において,少なくとも平成18年度において各会派や各議員に対していくらの政務調査費が支給されたのか,そして,各会派や各議員がどのような支出項目についていくら支出したのかが認識できるようになっている。
また,監査請求書に添付された収支報告書には備考欄が設けられており,各支出項目の大まかな細目が記載されている。
さらに,奈良県政務調査費の交付に関する規定7条では,「会派の政務調査費経理責任者及び議員は,政務調査費の支出について,会計帳簿を調整しその内訳を明確にするとともに,証拠書類等を整理保管し,これらの書類を当該政務調査費の収支報告書の提出期間の末日の翌日から起算して五年を経過する日まで保存しなければならない。」となっており,平成18年度における各会派,各議員の政務調査費の支出の明細に関する資料も客観的に存在する状態にある。
以上よりすれば,本件監査請求において,監査請求人である住民らは,平成18年度における各会派や各議員への政務調査費の支給額,各会派や各議員の政務調査費の支出項目(収支報告書の備考欄には大まかな細目が記載されている),支出金額が認識できる形で監査請求したのであるから,平成16年の2つの最高裁判決がいうところの「県監査委員において,本件監査請求の対象を特定して認識することができる程度に摘示されていた」といえる。
住民らは,監査請求対象の特定について,現在の奈良県の政務調査費制度(収支報告書に領収書等の資料の添付が要求されていない)の下,可能な限りの資料を提出している。他方,監査委員は,監査請求書及び添付資料から監査対象を認識することが可能であり,かつ,監査に必要な資料を入手することが容易であるにもかかわらず(奈良県政務調査費の交付に関する規定7条),本件監査請求の大部分を却下した。
しかし、これ以上の資料の提出を住民らに求めることは,住民らに不可能を強いるものであり,住民監査制度を機能不全に陥らせ,ひいては憲法92条に保障する「地方自治の本旨」、すなわち「住民自治」をないがしろにする結果となる。

「訴状:政務調査費違法支出損害賠償命令請求事件」

「訴状:政務調査費違法支出損害賠償命令請求事件」

訴状

  平成19年11月  日
原告ら訴訟代理人
弁護士    石   川   量   堂
奈良地方裁判所 御中

    当事者目録

 別紙当事者目録記載のとおり。

  訴訟物の価額   金160万円
  貼用印紙額 金1万3000円

政務調査費違法支出損害賠償命令請求事件

第1 請求の趣旨
1 被告は、別表請求金額一覧1記載の各相手方会派に対し、同目録記載の各返還請求金額及びこれに対する平成19年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。

2 被告は、別紙請求金額目録2記載の各相手方議員(但し、同目録18記載の議員を除く)に対し、同目録記載の各金額及びこれに対する平成19年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。

3 訴訟費用は被告の負担とする。
  との判決を求める。

第2 請求の原因
 1 当事者
(1) 原告らはいずれも奈良県の住民である。
(2) 被告は、現在、奈良県の執行機関たる奈良県知事である。
(3) 相手方らは、いずれも平成18年度における奈良県議会の会派ないし奈良県議会議員である。

2 政務調査研究費の交付とその使途基準
(1) 奈良県は、平成13年4月1日、地方自治法100条12項、同条13項の規定に基づき、議員の調査研究に資するための必要な経費の一部として政務調査費を交付するため、「奈良県政務調査費の交付に関する条例」(以下、「本条例」という。)を施行し、平成18年度は本条例に基づき、各会派に対し月5万円に当該会派の所属議員数を乗じた額が、各議員に対し月額25万円の政務調査費が、それぞれ交付された(本条例3条、4条)。
(2) ところで、政務調査費は、本条例施行規則5条の別表1、2所定の各項目の各内容に即して使用されなければならないとされている(本条例9条)。よって、各会派の当該経費の支出が、上記別表1,2に即していない場合は、本来、政務調査費の支給対象とならないというべきである。
(3) したがって、各会派が、本条例施行規則5条別表に照らして政務調査費の支給対象とならないと認められる活動に政務調査費を充てた場合、当該支出の金額を返還すべきである。
ところが、各会派の支出を見ると政務調査費の対象にならない支出に政務調査費が充てられている。

 3 政務調査費支出の適法性審査の基準
 (1) 政務調査費の透明性確保の要請
 ア 政務調査費の透明性に関する法の趣旨
地方自治法の改正(平成12年法律89号)により、平成13年4月から、条例の定めに基づいて会派または議員に対する政務調査費を支給できることとなった。
上記地方自治法の改正の趣旨は、地方議員の調査活動基盤の充実にとどまらず、政務調査費の使途の透明化という点にあった。それは以下の(ア)~(ウ)のような諸事情を見ても明らかである。
  (ア) 地方自治法の一部を改正する法律案の趣旨説明
第147国会衆議院地方行政委員会は、平成12年5月18日、地方自治法の一部を改正する法律案起草案を委員会の成案とする決定をしたが、その際の趣旨説明において、「地方議員の調査活動基盤の充実を図る観点から、議会における会派等に対する調査研究費等の助成を制度化し、あわせて、情報公開を促進する観点から、その使途の透明性を確保することが重要になっております。」と述べられている。
  (イ)自治省行政局行政課長通知
「地方自治法の一部を改正する法律の施行について」と題する、平成12年5月31日付の自治省行政局行政課長通知は、「政務調査費については、情報公開を促進し、その使途の透明性を確保することも重要であるとされていることから、条例の制定にあたっては、例えば、政務調査費にかかる収入及び支出の報告書等の書類を情報公開や閲覧の対象とすること検討するなど透明性の確保に十分意を用いること。」を求める。
  (ウ) 地方制度調査会の答申
地方制度調査会は、平成12年10月25日、「地方分権時代の住民自治制度のあり方及び地方税財源の充実確保に関する答申」において「条例により政務調査費を交付することができるようにするとともに透明性を強化すること」を求める。
 (2) 政務調査費の使途基準、議長の調査権限、会計帳簿等の整備保管
政務調査費は、その支給目的が「議員の調査研究に資するため」であり、この支給目的に即して定められた使途基準(奈良県政務調査費の交付に関する規程5条別表1、2)に従って使用しなければならず(奈良県政務調査費の交付に関する条例9条)、会派の代表者及び議員は、年度終了の翌日から30日以内に収支報告書を議長に提出しなければならない(同条例10条1項)。収支報告書の提出を受けた議長は、適正な運用を期すため必要に応じて調査がすることができ(条例11条)、交付された政務調査費を使途基準に従って使用した額を総額から控除した場合に残余があれば、会派及び議員はこれを返還しなければならない(条例12条)。何人も議長に対して収支報告書の閲覧を請求できる(条例13条2項)。そして、上記規程7条は、会派の政務調査経理責任者及び議員は、会計帳簿の調整と証拠書類(ここに領収書が含まれるのは性質上当然である。)の整備保管し5年間保存しなければならないと定める。
上記条例及び規程及び政務調査費の趣旨に照らすと、交付の趣旨及び使途基準に照らし、県政に関する調査研究に資すると認められない場合、当然、当該部分は違法支出として返還が求められると解すべきである。
 (3) 適法性審査基準
透明性確保の要請及び政務調査費の使途基準の整備、議長の調査権限、会計帳簿等の整備保管の要請等の制度に鑑みれば、収支報告書の収支の記載内容が、実際の政務調査費の支出内容と大幅に相違していたり、その支出内容が使途基準に適合しているかどうかを確認できないような場合は、収支報告書の作成を義務付けて政務調査費の適正な支出とその透明性を確保しようとしている上記各規定の趣旨目的を満たすものとはいえず、当該部分の支出は政務調査費の適正な支出とみとめることができないので、これは法律上の原因を欠く不当利得として県に返還すべきである。

4 平成18年度における政務調査費の違法支出
奈良県議会の各会派及び各議員の収支報告書の収支の記載内容は、別表3、4記載のとおり、実際の政務調査費の支出内容と大幅に相違していたり、その支出内容が使途基準に適合しているかどうかを確認できず、各支出は政務調査費の適正な支出とみとめることができないので、これは法律上の原因を欠く不当利得として県に返還すべきである。
なお、別表4の番号18の笹尾保博議員は死亡しているため、相手方から除外した。

5 監査請求
原告らは、平成19年8月28日、地方自治法242条1項の規定に基づき、被告らの上記各支出についてその返還を求める等の監査請求を奈良県監査委員に対して行ったが、奈良県監査委員は、同年10月26日、原告らの監査請求は理由がないとして一部棄却、また、一部について監査請求の要件が具備されていないとして却下の決定を行い、その通知は翌日原告らに送達された。

6 結論
よって、原告らは、被告に対し、地方自治法242条の2第1項4号前段に基づき、不当利得返還請求として、相手方らに請求の趣旨各項記載の請求をするよう命ずること求めて本訴に及んだ。

立証方法

追って書証を提出する。

附属書類

訴訟委任状 55通
以上

「奈良県県会議員政務調査費住民監査請求書」

「奈良県県会議員政務調査費住民監査請求書」

住民監査請求書

 請求人らは、地方自治法242条1項の規定により、事実証明書を添付し、奈良県監査委員に対し、下記第1各項記載のとおり必要な措置をとるよう求める。
 平成19年8月  日
奈良県監査委員  殿

住 所
氏 名  印
職 業

住 所
氏 名 印
職 業

住 所
氏 名 印
職 業
(その他の請求人は別紙請求人一覧表記載のとおり。)

  記
第1 監査請求の趣旨
1 平成18年度における、奈良県議会のすべての会派(自由民主党、新創NARA、民主党、日本共産党、県民クラブ、公明党、無所属・上松正知、無所属・田中惟允)に対して支給された政務調査費2481万2909円(但し、支給額全額2635万円から残余額合計153万7091円を差し引いた額)は全て違法に使用されたから、各会派に対して、各支給分全額の返還を求める。
2 平成18年度において、すべての奈良県議会議員に対して支給された政務調査費1億3092万2220円(但し、支給額全額1億3175万円から残余額合計82万7780円を差し引いた額)は全て違法に使用されたから、各議員に対して、各支給分全額の返還を求める。

第2 請求の理由
 1 政務調査費支出の適法性審査の基準とその適用
 (1) 政務調査費の透明性確保の要請
 ア 政務調査費の透明性に関する法の趣旨
地方自治法の改正(平成12年法律89号)により、平成13年4月から、条例の定めに基づいて会派または議員に対する政務調査費を支給できることとなった。
上記地方自治法の改正の趣旨は、地方議員の調査活動基盤の充実にとどまらず、政務調査費の使途の透明化という点にあった。それは以下の(ア)~(ウ)のような諸事情を見ても明らかである。

  (ア) 地方自治法の一部を改正する法律案の趣旨説明
第147国会衆議院地方行政委員会は、平成12年5月18日、地方自治法の一部を改正する法律案起草案を委員会の成案とする決定をしたが、その際の趣旨説明において、「地方議員の調査活動基盤の充実を図る観点から、議会における会派等に対する調査研究費等の助成を制度化し、あわせて、情報公開を促進する観点から、その使途の透明性を確保することが重要になっております。」と述べられている。

  (イ)自治省行政局行政課長通知
「地方自治法の一部を改正する法律の施行について」と題する、平成12年5月31日付の自治省行政局行政課長通知は、「政務調査費については、情報公開を促進し、その使途の透明性を確保することも重要であるとされていることから、条例の制定にあたっては、例えば、政務調査費にかかる収入及び支出の報告書等の書類を情報公開や閲覧の対象とすること検討するなど透明性の確保に十分意を用いること。」を求める。

  (ウ) 地方制度調査会の答申
地方制度調査会は、平成12年10月25日、「地方分権時代の住民自治制度のあり方及び地方税財源の充実確保に関する答申」において「条例により政務調査費を交付することができるようにするとともに透明性を強化すること」を求める。

 イ 政務調査費の透明性確保の実現
都道府県レベルでは、岩手県、宮城県、新潟県、長野県、鳥取県で政務調査費の支出に関する領収書の開示が無条件で実現している。また、10道府県での条件付での領収書開示が実現している。
領収書の原則開示によって、政治活動の自由に支障が生じるといった具体的な問題は生じていない。

 (2) 政務調査費の目的、使途基準、議長の調査権限、会計帳簿の整備等
政務調査費は、その支給目的が「議員の調査研究に資するため」であり、この支給目的に即して定められた使途基準(奈良県政務調査費の交付に関する規程5条別表1、2)に従って使用しなければならず(奈良県政務調査費の交付に関する条例9条)、会派の代表者及び議員は、年度終了の翌日から30日以内に収支報告書を議長に提出しなければならない(同条例10条1項)。収支報告書の提出を受けた議長は、適正な運用を期すため必要に応じて調査がすることができ(条例11条)、交付された政務調査費を使途基準に従って使用した額を総額から控除した場合に残余があれば、会派及び議員はこれを返還しなければならない(条例12条)。何人も議長に対して収支報告書の閲覧を請求できる(条例13条2項)。そして、上記規程7条は、会派の政務調査経理責任者及び議員は、会計帳簿の調整と証拠書類(ここに領収書が含まれるのは性質上当然である。)の整備保管し5年間保存しなければならないと定める。
上記条例及び規程及び政務調査費の趣旨に照らすと、交付の趣旨及び使途基準に照らし、県政に関する調査研究に資すると認められない場合、当然、当該部分は違法支出として返還が求められると解すべきである。

 (3) 適法性審査基準
上記のように法が政務調査費支出の透明性を求めており(透明性確保の必要性)、かつ、全面開示しても特段の支障がない(透明性確保の許容性)。したがって、政務調査費の支出の透明性確保の要請は重視されなければならない。
さらに、本件条例その他の上記規程が、交付される政務調査費の使途基準を定めた上、会派に経理責任者を置くことや、会派及び議員に対し、収支報告書の提出、会計帳簿の調整と証拠書類の整理、保管の義務付け、議長の調査権を認めているのは、税金から支出される政務調査費の実際の使途が、上記使途基準に適合しており、県政に関する調査研究に資するため必要な経費として認められるのであることを担保し、その透明性を確保する趣旨目的によるものと解される。
したがって、収支報告書の収支の記載内容が、実際の政務調査費の支出内容と大幅に相違していたり、その支出内容が使途基準に適合しているかどうかを確認できないような場合は、収支報告書の作成を義務付けて政務調査費の適正な支出とその透明性を確保しようとしている上記各規定の趣旨目的を満たすものとはいえず、当該部分の支出は政務調査費の適正な支出とみとめることができないので、これは法律上の原因を欠く不当利得として県に返還すべきである。

 (4) 上記適法性審査基準の適用と支出の違法
奈良県議会各会派及び各議員に対して支給された政務調査費の収支報告書には証拠書類の添付がなく、収支報告書の収支の記載内容が、実際の政務調査費の支出内容と大幅に相違しているか否か、その支出内容が使途基準に適合しているか否かを確認することができない。
したがって、収支報告書の作成を義務付けて政務調査費の適正な支出とその透明性を確保しようとしている条例及び規程の各条項の趣旨目的を満たすものとはいえず、当該部分の支出は政務調査費の適正な支出とみとめることができない。
 2 証拠書類が提出された場合における適法性審査基準
本件監査請求にかかる監査にあたり、奈良県議会各会派及び各議員から奈良県監査委員に対し、証拠書類の提出がなされた場合は、次のような審査基準に基づいて、政務調査費の支出の適法性を審査すべきである。
なお、以下の各項の各論では特に目に付く事例を指摘したに過ぎず、指摘したもの以外は適法という趣旨では決してないことを留意されたい。

 (1) 調査研究費の支出
  ア 適法性の判断基準
会派ないし議員が行う県の事務及び地方行財政に関する調査研究並びに調査委託に要する経費をいうから、①調査目的が、「県の事務及び地方行財政に関する調査研究」という調査研究費の趣旨に適合すること、②上記の調査目的を踏まえ調査行程や調査先が選定されていること。特に、海外調査については、「県の事務及び地方行財政に関する調査研究」を行うために、国内調査では目的を達成することができず、海外にまで赴かなければならない高度の必要性が認められること、③調査先において、県の事務及び地方行財政に関して中身のある説明や質疑応答がなされていること、④訪問調査が調査行程の主要な部分を占めていること、⑤調査費用が目的、効果との関係で高額でないこと、が必要である。
 イ 各論
例えば、自民党は、1062万円を「県内調査旅費」に支出している。しかし、「県内調査」にこれほど多額の旅費を要するはずがなく、その額自体極めて不自然である。金額が極めて多額であることを考えると、実際は海外調査に充てられている疑いが濃い。海外調査については、上記①~⑤の要件を満たす必要があり、この要件がない限り違法である。
また、菅野泰功議員は、調査研究費として車リース料とガソリン代を毎月10万5000円ずつ支出し、合計126万円(10万5000円×12=126万円)支出しているが、このような月々の定額支出は具体的な調査研究活動と関係なくなされるものと考えざるを得ないから、違法な支出と断ぜざるをえない。
神田加津代議員も、調査研究費に189万円も支出している。内訳として「学識経験者等への調査委託費」、「県外調査費」となっており、旅費・宿泊費も支出されているはずであるのに支出額に端数がなく不自然であり、額が他の議員と比べても多いことも相まって、不適正支出の疑いがある。
このほか上松正知議員も、調査研究費として140万6412円を支出しており、その内訳として「県内県外調査費」の他「ガソリン代」を挙げている。具体的な調査研究活動と関係のない日常の走行に支出されたガソリン代を充てているなら違法支出でである。

(2) 研修費
  ア 適法性の判断基準
議員の「調査研究に資するために必要な経費の一部」のためのものであり、研修費も、会派に対する場合は、「会派が行う研修会、講演会の実施に必要な経費並びに他団体が開催する研修会、講演会等への所属議員及び会派の雇用する職員の参加に要する経費」であり(奈良県政務調査費の交付に関する規程5条別表1)、議員に対する場合、「団体等が開催する研修会、講演会等への議員及び議員の雇用する秘書等の参加に要する経費」とされている。
したがって、例えば単に当該団体の会合で来賓として挨拶や活動報告するためだけに参加するとか、儀礼的な意味で参加するような場合に研修費を支出するならば、上記使途基準を逸脱した不適法な支出となる。
イ 各論
秋本登志嗣議員は、研修会参加費として82万1000円も支出している。通常、どのような団体の研修会であろうと、資料代を含む参加費に交通費、宿泊費を含めてもこれほどかかることはないと考えられる。多額になったのは、参加した回数が多数回に及ぶということなのか、他に原因があるのか疑問が残る。

 (3) 会議費
  ア 適法性の判断基準
会議費は「会派における各種会議に要する経費」とされており、会議の目的や内容等についてそれ以上の限定はない。しかし、政務調査費は、「議員の調査研究に資するために必要な経費の一部」を交付するものである(地方自治法100条13項、奈良県政務調査費の交付に関する条例1条)。
したがって、会議費として支出できる経費としては、会派が実施する議案等の審議に関する会議、県政に関する施策等の検討会議、県民の県政に関する意見及び要望を吸収するための意見交換会議その他これらに類する会議に要する経費等に限定されるべきであって(栃木県政務調査費に係る留意事項、千葉県会議政務調査費使途基準など参照。)、これとは無関係な単なる会派活動にまで会議費を支出するのは違法である。
また、議員に対する政務調査費のうち会議費は、「議員が行う地域住民の県政に関する要望、意見を吸収するための各種会議に要する経費」を支弁するものである(奈良県政務調査費の交付に関する規程5条、同規程別表2)。
したがって、これ以外の例えば当該議員の活動成果の報告を目的とするに過ぎないような県政報告会、議会活動報告会といった会議は、政務調査費から支出を許された会議費には当たらないというべきである。
イ 各論
新創NARAの会議費は108万8135円に上っており、他の会派や議員と比べても相当多額である。多数の支持者を集めて行う、選挙の決起集会や選挙を意識した議会報告会に関する費用の支出ならば、それは違法である。仮に必要な会議であっても場所が高額な高級ホテルなら不要な支出であるから違法である。

 (4) 資料作成費
  ア 適法性の判断基準
会派及び議員の政務調査費のうち、資料作成費は「議会審議に必要な資料」を作成するために要する経費に支弁されるものである(奈良県政務調査費の交付に関する規程5条、同規程別表1及び同別表2)。
したがって、単に会派や個々の議員の活動を県民に広報するために作成される資料に過ぎないものは、「会議審議に必要な資料」とは言い難く、このようなものにまで資料作成費を支出することは許されないというべきである。
また、資料作成費の対象となった資料は「議会審議に必要な」ものでなければならず、実際に議会審議に要しなかった資料は資料作成費の対象とならない。
イ 各論
各会派、各議員の資料作成費の内訳がつまびらかでないので、上記一般論以上に何かを指摘することは難しい。

 (5) 資料購入費
  ア 適法性判断の基準
政務調査費は「議員の調査研究に資するため必要な経費の一部」を交付するものであり、資料購入費も、会派や議員が行う「調査研究費のために必要な図書・資料等の購入に要する経費」を支弁するものである(奈良県政務調査費の交付に関する規程5条別表1、2)。このような趣旨に照らせば、資料として支出できる経費としては、議会審議に必要な専門的知識を得るために書籍等の購入に限定されるべきであって、単に一般教養を高めたり日常的な情報収集活動を行ったりするための書籍等の購入まで資料購入費を支出することは許されない。
また、一般図書や雑誌、情報誌等は、一般市民が行う個人の日常的な情報収集活動の域をでるものではない。
イ 各論
会派、議員とも雑誌や書籍、新聞の購入を資料購入費として支出している場合が多いが、これらの相当な部分は県政の関連性のない記事や記載で占められているものも多いと考えられる。県政と直接の関連性がなく、単に一般教養を高めるための書籍や雑誌は政務調査費の一環としての資料購入費とは言えず違法である。
また、新聞は通常議員ではない一般人も購読しているのが通常だから、新聞を読むことは一般人の行う情報収集活動と異ならず調査研究活動とは言えない。したがって、新聞購読料の支出も違法である。

 (6) 広報費
  ア 適法性判断の基準
広報費は、会派または議員が行う「議会活動及び県政に関する政策等の広報活動及び県政に関する政策等の広報活動に要する経費」とされており(奈良県政務調査費の交付に関する規程5条別表1、2)、広報活動の目的や内容等についてそれ以上の限定はない。
しかし、「議員の調査研究に資するため必要な経費の一部」を交付するものであって、会派活動全般を助成するものではない。全国都道府県議会議長会も平成13年10月16日に作成した「政務調査費の使途の基本的な考え方について」で「議員が行う広報には、その内容に照らして大別すれば①住民の意見を聴取することを目的とするもの、②議会活動の成果等を報告するもの、の2種類が考えられるが、政務調査活動という観点からは、住民の意見を議会活動に反映させることを目的としたものであるか否かを基本として判断されるべきものと考える。」とする。
こうした考え方を踏まえるならば、県民の意思を収集、把握するための手段として広報活動を行うのであればともかく、それとは無関係な一般的な広報活動にまで政務調査費を支出することを認めるのは、県費によって会派活動を助成することに他ならず、調査研究の費用を助成するという政務調査費の趣旨に反すると言わざるを得ない。
  イ 各論
中村昭議員が広報費を624万円も計上しているのを始め、梶川虔二議員、山本保幸議員、吉川隆志議員は広報費が200万円を超えている。これらの議員の広報費の内訳は、広報紙(誌)、広報費、議会報告などの名称は様々であるが、これらはそのほとんどが、当該会派あるいは当該議員の活動報告で、端的に言えば宣伝広告費の性格が強いという疑いがある。広報費の支出額がこれほど多くな議員についても、単なる活動報告の広報のため支出している場合は政務調査費にあたらず違法支出である。
ホームページの作成・管理費を広報費に上げているケースが多数あるが、議員のホームページは議員の政治姿勢や考え方、議会活動その他議員としての活動を広報宣伝するものがほとんどであり、県民の意思の収集、把握の手段として利用されているケースはほとんどない。したがって、ホームページに関する支出はそのほとんどが違法である。

 (7) 事務所費
  ア 適法性判断の基準
事務所費は、「議員が行う調査研究活動のために必要な」事務所の設置、管理に要する経費を支弁するものであって、事務所を調査研究活動以外の活動に利用した場合の経費を政務調査費によって支払うことは許されない。この点、「政務調査費の使途の基本的な考え方について」では、「議員の活動は、議会活動、政党活動、選挙活動等と渾然一体となっていることが多く、一つの活動が調査研究活動と他の議員活動の両面を有し、渾然一体となっていることが多く、そのため特に事務所費、人件費等の全額を政務調査費によって支払うことは不適当であり、各活動の実績に応じて按分して支払う必要がある。」とする。
したがって、事務所の設置、管理に要した経費について、調査研究活動に要した経費とそれ以外の活動に要した経費とを按分することなく、その全額を政務調査費から支出することは、政務調査費の趣旨及び使途基準に適合せず違法である。また、両者を按分して支出している場合であっても、政務調査費の使途の透明性を確保する観点から、按分比率及び積算根拠を収支報告書に明記すべきである。
  イ 各論
高柳忠夫議員、田尻匠議員が事務所の賃借料と光熱費で160万円以上支出している。事務所は、調査研究活動以外の他の活動すなわち議会活動、政党活動、選挙活動等にも使われるから、前者と後者を按分して前者についてのみ事務所費が支出されるのでなければ、按分比率を超えた部分は違法である。
また、自宅を事務所と兼ねている場合、たとえそれが借家であっても事務所借上料を支出することは認められない。個人の生活の場である自宅については、その賃料も当該個人が全額負担するのが当然だからである。
なお、国中憲治議員は「自治会費」を事務所費としてあげているが、上記ア基準に照らしてもこれが「事務所費」に該当しないことは明らかである。

 (8) 事務費
  ア 適法性判断の基準
「政務調査費の使途の基本的な考え方について」では、「議員の活動は、議会活動、政党活動、選挙活動等と多彩であり、一つの活動が調査研究活動と他の議員活動の当面を有し、渾然一体となっていることが多く、そのため特に事務所費、人件費等の全額を政務調査費によって支払うことは不適当であり、各活動の実績に応じて按分して支払う必要がある」との見解が示されている。
したがって、調査研究活動に要した経費とそれ以外の活動に要した経費とを按分することなく、その全額を政務調査費から支出することは、政務調査費の趣旨及び使用基準に適合しない。両者を按分して支出している場合であっても、政務調査費の使途の透明性を確保する観点から、按分率及びその積算根拠を収支報告書に明記すべきである。
  イ 各論
山本進章議員が163万0915円、川口正志議員が133万5645円、藤本昭広議員が130万4600円、田中惟允議員が123万5600円、それぞれ事務費に支出しており、これらは他の議員と比較しても多額である。前記のとおり、会派や議員の活動は調査研究活動に限られず、議会活動、政党活動、選挙活動等と多彩である以上、調査研究活動以外の他の活動に事務費が用いられることも当然にある。そうだとすると、前者と後者を按分して前者の部分についてのみ事務費を支出するのでなければ、その部分を超えた金額は違法支出となる。

 (9) 人件費
  ア 適法性の判断基準
人件費は、あくまで会派が行う「調査研究を補助する職員」を雇用する経費を支弁するものであって(奈良県政務調査費の交付に関する規程5条別表1及び2)、調査研究活動以外の活動に要した経費を政務調査費によって支払うことは許されない。
「政務調査費の使途の基本的な考え方について」では、「議員の活動は、議会活動、政党活動、選挙活動等と多彩であり、一つの活動が調査研究活動と他の議員活動の当面を有し、渾然一体となっていることが多く、そのため特に事務所費、人件費等の全額を政務調査費によって支払うことは不適当であり、各活動の実績に応じて按分して支払う必要がある。」「事務所職員を債務調査活動に従事させる場合、調査研究に従事する平均時間、日数等で按分する。」との見解が示されている。
したがって、調査研究活動に要した経費とそれ以外の活動に要した経費とを按分することなく、その全額を政務調査費から支出することは、政務調査費の趣旨及び使途基準に適合しないと思われる。また、両者を按分して支出している場合であっても、政務調査費の使途の透明性を確保する観点から、按分比率及びその積算根拠を収支報告書に明記すべきである。
  イ 各論
(ア) 山下力議員は人件費のみに486万2130円を、吉田勝亮議員も人件費のみに400万3800円を計上し、2人とも他の項目は支出額がゼロである。しかし、政務調査を行ったのであれば、資料や情報収集のための調査研究費、研修費、資料購入費等が必要になるのが通常である。また、集めた資料や情報を分析したりまとめて記録するのに事務費や資料作成費なども必要となる。したがって、人件費だけが極端に多く、他の支出がゼロというのはいかにも不自然であり、真実、政務調査のための人件費の支出がどうか極めて疑わしい。
(イ) 上記2名の議員ほど極端ではないにしても、人件費の支出が多いのは、田尻匠議員(280万円)、国中憲治議員(251万円)、中野雅史議員(240万円)などとなっており、会派では民主党の246万2800円が最も多い。
また、日本共産党の所属議員3名は、全て事務局員2名に対する人件費として各120万円を支出し、会派である日本共産党も事務局員2名に対する人件費として合計40万円を支出している。各議員及び会派である日本共産党が全体で2人を雇用し、この2名の給与として各議員120万円、会派40万円を負担している可能性があり、そうだとすると1人あたり年間200万円{(120万円×3+40万円)÷2=200万円}の給与を支給していたことになる。
上記のように、人件費の支出が多い議員や会派は勿論、人件費の額自体は比較的少額であったとしても、被用者は調査研究活動にのみ従事しているわけではなく、議会活動、政党活動、選挙活動等にも従事しているのが通常だから、調査研究活動とそれ以外の活動を按分して、人件費の支出をするのでない限り、本来の按分比率を超える部分は違法支出となる。

 3 奈良県の財政状況と政務調査費の支出
 (1) 1兆円に迫る奈良県地方債残高
平成18年度末における、奈良県の県債の現在残高は9782億6336万5000円に上っている。平成8年度では6236億円だったが、その後一貫して増加しているのである。奈良県の平成19年度一般会計予算4562億7300万円の2倍に達している。
 (2) 財源の減少
平成19年度の奈良県財政は歳入面では主な財源を合計すると18億円減少しており、地方交付税等の削減により平成16年から3年間で385億円もの財源が減少している。
 (3) 奈良県の経常収支比率、公債費負担比率
奈良県の経常収支比率は、平成2年度の73.1%からほぼ年々増加し、平成17年度で93.1%で全国ワースト20位(全国平均92.6%)、公債費負担比率は、平成13年ころより20%を超え、平成17年度で21.7%となっており、財政の硬直化が進んでいる。
 (4) 聖域なき抜本的な制度見直しの必要性
奈良県は、「県政だより奈良」(2007年8月号)の中で、奈良県財政について「さらに、聖域を設けず抜本的な制度の見直しを行います。」と記載し、抜本的な財政改革の必要性を強く示唆する。
 (5) 10年で15億円以上の政務調査費
会派に対する政務調査費は月額5万円に会派所属議員の数を乗じた額(条例3条1項)、議員に対する政務調査費は月額25万円(条例)となっており、奈良県議会議員の現在の定数は44人だから、単純計算すると、今後毎年、会派に対し2640万円(5万円×12×44=2640万円)、議員に対し1億3200万円(25万円×12×44=1億3200万円)、合計1億5840万円の政務調査費が支出されることになり、10年で15億8400万円にも上る。
 (6) 財政難の中での政務調査費の使い方
奈良県議会議員は、政治行政の問題を判断する知見を有する県民代表として、率先して財政改革のために努力すべき立場にある。上記のように奈良県が深刻な財政難にある以上、本来の使途基準を逸脱した支出が許されないことは勿論、県政との関連性が疑われる、観光地を巡ることが中心の海外視察など費用対効果が希薄な、政務調査費の使い方は許されない。
また、会議に費用のかかる高級ホテルを会議に使ったり、過度に高価な備品を購入したりすることも許されない。
本件監査にあたってはこのような視点も必要である。

4 個別外部監査契約に基づく監査の請求
監査委員4名のうち2名は奈良県議会議員である。したがって、この2名の監査委員は監査対象たる事件に利害関係を有する者として、本件の監査をすることができない(地方自治法199条の2)。残り2名も、いままで一緒に監査委員として仕事をしてきた議員を含む県議らの政務調査費の支出に関する監査であるから、気兼ねがないとはいえない。
そこで、請求人らは、本件監査請求に関し、奈良県外部監査契約に基づく監査に関する法律3条5項に基づき、個別外部監査契約に基づく監査を実施することを求める。
 
5 議員のみなさんへ(蛇足)
 (1) 議員さん証拠書類の開示の英断を。
この監査請求書をお読みになる議員は、不快感な思いをされるかもしれない。しかし、その不快な思いの原因が、請求人らの根拠のない憶測にあるとすれば、その点について請求人らには何ら責任はない。
議員諸兄諸姉が証拠書類を出さない以上、請求人らはあれこれ憶測せざるを得ないだけだからである。不快の原因は議員諸兄諸姉ご自身の中にある。
情報の不開示は、代表者(議員)と有権者の間に相互不信を生み、間接民主主義の機能を停滞させるだけである。証拠書類の開示に関する議員諸兄諸姉の決断を切に期待したい。
(2) せめて収支報告書だけでも丁寧で詳しく。
次に、日本共産党の収支報告書は、支出細目が比較的細かく記載されている。この点では相対的とはいえ評価できなくはない。しかし、各細目の支出項目への分類はかなり恣意的である。例えば、「県政資料室コピー代」は本来「資料作成費」に含まれるべきであるのに「調査研究費」欄に記載されている。「カセットテープ購入」も本来「事務費」に含まれるべきであるのに「会議費」欄に記載されている。「ホームページ更新料」は本来「広報費」に含まれるべきであるのに「事務費」欄に記載されている。「電話代」は本来「事務費」に含まれるべきであるのに「広報費」欄に記載されている。「カメラ購入費」は「事務費」に含まれるべきであるのに「事務所費」欄に記載されている。同様の傾向は日本共産党所属の議員の収支報告書にも認められる。
これらの細目の分類はある程度、作成者の裁量が尊重されるとはいえ、あまりに恣意的な細目分類がなされると、各議員及び各会派の細目分類がばらばらになり、事後の監査や県民による閲覧及び検討にあたって、内容の把握や相互の比較等に困難をきたすので好ましくない。事実同党及び同党議員の収支報告書は一番読みづらかった。
なお、細かい支出の項目分けは、条例や規程別表の他、奈良県議会で会派及び議員に配布された「政務調査費の使途についての考え方」の「具体的な例示」を見れば難しいことではない。それにもかかわらず、上記のような恣意的な分類がなされるのは、作成者の能力の問題かやる気の問題かいずれかに起因するといわざるをえない。
日本共産党以外の他の会派や議員は、日本共産党と比べ、政務調査費の支出の透明性確保という意欲が一層欠落していたため、支出の細かい説明をしようとせず、そのために支出細目を支出項目に分類する作業があまり必要なかったとも言える。その意味で、日本共産党以外の他の会派や議員も、日本共産党及び同党所属の議員を笑うことはできないであろう。
いずれにしても、せめて収支報告書は、納税者に見せる神聖な書類として、真面目にできるだけ詳細でわかりやすく丁寧に作成していただきたい。

添付書類

奈良県議会における、各会派の平成18年度政務調査に係る収支報告書
奈良県議会における、各議員の平成18年度政務調査に係る収支報告書
県財政状況の公表
奈良県財政の状況についてお知らせします(奈良県民だより2007年8月号)
経常収支比率
公債費比率




県債とは、公共施設の建設や災害復旧事業など一時に多額の経費を要し、その事業効果が後年度に及びかつ後年度に県民に応分の負担を求めることが適当な事業の財源に充てるために、県議会の議決や国との協議を経て借り入れ、一定の割合で償還していく長期の借入金である。